# アスパラガスの漢字表記とその由来:知られざる「竜髭菜」の世界
皆さんは「竜髭菜」という漢字を見て、何の野菜か分かりますか?実はこれ、私たちが普段「アスパラガス」と呼んでいる野菜なんです。春から夏にかけて旬を迎えるこの緑色の野菜には、実は複数の漢字表記があり、それぞれに興味深い由来があります。今回は、アスパラガスの漢字表記とその由来について詳しくご紹介します。
アスパラガスの主な漢字表記
アスパラガスには主に以下の漢字表記があります。
- 竜髭菜(りゅうしさい)
- 石$5201柏(せきちょうはく)
- 松葉独活(まつばうど)
- 阿蘭陀雉隠(おらんだきじかくし)
- 阿蘭陀独活(おらんだうど)
それぞれの漢字表記にはどのような由来があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
「竜髭菜」の由来 – 龍のヒゲに似た姿から
「竜髭菜」という漢字表記は、アスパラガスの成長した姿が竜のヒゲに似ていることから名付けられました。私たちが普段食べているアスパラガスは若い新芽の部分ですが、そのまま成長させると、細かく枝分かれした葉(正確には茎)が生い茂り、それが竜のヒゲのように見えるのです。
この「竜髭菜」という表記は中国由来のもので、日本語ではなく中国語で「ロンシューツァイ」と読みます。日本では読み方はなく、そのままアスパラガスと呼ぶことが一般的です。
明治から昭和にかけて活躍した植物学者、矢部吉禎氏が1912年に著した『南満州植物目録』では、アスパラガスに「龍鬚菜(俗)」という漢字名が付けられていました。「龍鬚菜」の後ろに「(俗)」という注記があることから、当時の満州(中国の東北地方)で広まっていた俗語を採用したものと考えられています。
さらに古い1884年の『訂増英華字典』や1866年の英中辞典『English and Chinese Dictionary』にも「龍鬚菜」という表記が見られることから、中国の広い地域でこの漢字が使われていたと考えられます。
「石01柏」の由来 – 音から生まれた漢字
「石$5201柏」(せきちょうはく)という漢字表記も存在します。この表記の由来ははっきりとは分かっていませんが、中国語の「アスパラガス」の発音に漢字を当てはめたという説があります。
「$5201」は現代では見慣れない漢字ですが、中国では今でも使用されることがあります。アスパラガスという音と「石$5201柏」(せきちょうはく)の音が似ていることから、この漢字が当てられたのではないかと考えられています。
「松葉独活」と「阿蘭陀独活」- 和名からの漢字
「松葉独活」(まつばうど)という表記は、アスパラガスの和名「マツバウド」を漢字で表したものです。アスパラガスの葉が松の葉に似ていること、そして春に採れる山菜・ウド(独活)にも似ていることから、この名前が付けられました。
また「阿蘭陀独活」(おらんだうど)という表記もあります。これは、アスパラガスが日本にオランダから伝来したこと(「阿蘭陀」はオランダの古い呼び名)と、ウド(独活)に似ていることから名付けられました。
「阿蘭陀雉隠」- キジが隠れる大きさに
「阿蘭陀雉隠」(おらんだきじかくし)という珍しい表記もあります。これも同様にオランダから伝来したことを表す「阿蘭陀」に、「雉隠」(きじかくし)を組み合わせたものです。
アスパラガスは完全に成長すると、その枝葉が生い茂り、キジ(雉)が隠れられるほどの大きさになります。この特徴から「キジ隠し」という名前が付けられたのです。実際に家庭菜園でアスパラガスを育てると、初年度には食用の新芽は収穫できず、ひたすら細い枝葉が広がり、人の肩の高さほどまで成長することがあります。
アスパラガスの日本への伝来と歴史
アスパラガスは原産地が南ヨーロッパからロシア南部にかけての草原地帯で、古代ギリシャやローマでは既に栽培されていました。その後、ヨーロッパ各地に広がっていきました。
日本へは江戸時代に観賞用としてオランダから伝えられましたが、食用として栽培されるようになったのは明治時代に入ってからです。本格的な栽培が始まったのは大正時代で、北海道出身の農学博士である下田喜久三氏が地元の冷害にも強いアスパラガスを品種改良したことが大きく貢献しています。
当初は缶詰用のホワイトアスパラガスが流通の大半を占めていましたが、その後国内でも消費されるようになり、昭和40年代以降はグリーンアスパラガスが主流となりました。近年では、アントシアニン色素の多い紫色や桜色の品種も登場しています。
アスパラガスの名前の由来
「アスパラガス」という名前自体は、「たくさん分かれる」「激しく裂ける」などの意味を持つギリシャ語「asparagos(アスパラゴス)」が語源です。これはアスパラガスの若い芽が次々と生えてくる様子や、成長した姿が細かく枝分かれする特徴を表していると言われています。
美味しいアスパラガスの選び方と保存方法
アスパラガスを購入する際は、以下のポイントに注目すると良いでしょう。
- 穂先が締まっているもの
- ずっしり重みを感じるもの
- 切り口がきれいなもの
保存方法は以下の通りです。
- 軽く濡らしたペーパータオルや新聞紙で包む
- ビニール袋に入れて軽く口を閉じる
- 冷蔵室で立てて保存する(保存期間は約5日)
アスパラガスは乾燥と湿気に弱い食材です。適した保存温度は約2.5度と言われており、野菜室よりも冷蔵室での保存がおすすめです。
家庭でアスパラガスを育ててみよう
アスパラガスは家庭菜園でも育てることができます。多年草なので、一度植えれば数年間にわたって収穫を楽しむことができます。ただし、苗から育てても初年度は収穫できず、ひたすら緑の枝葉が成長するだけです。2年目以降になって初めて食用の新芽が出てくるので、少し長い目で見る必要があります。
家庭で栽培すると、市販のものとは違った新鮮さと味わいを楽しむことができ、毎日新しい芽が出てくる様子を観察する楽しみもあります。
まとめ
アスパラガスには「竜髭菜」「石$5201柏」「松葉独活」「阿蘭陀雉隠」「阿蘭陀独活」など、複数の漢字表記があり、それぞれに興味深い由来があります。特に「竜髭菜」は、成長したアスパラガスの姿が竜のヒゲに似ていることから名付けられた中国由来の表記です。
普段何気なく食べているアスパラガスにも、このような豊かな歴史と文化的背景があることを知ると、より一層その魅力を感じることができるのではないでしょうか。次にアスパラガスを食べる機会があれば、ぜひその漢字表記と由来についても思いを馳せてみてください。
参考情報:
漢字カフェ https://www.kanjicafe.jp/detail/7400.html
ゲットニュース https://getnews.jp/archives/2585521
ちそうメディア https://chisou-media.jp/posts/3164
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