お酒は「1杯までならOK」の根拠とは?大腸がんリスクと適正飲酒量を徹底解説

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お酒が好きな方にとって「1日1杯まで」という制限は厳しく感じるかもしれません。「酒は百薬の長」という言葉もありますが、実際のところ健康面から見た適正飲酒量はどのくらいなのでしょうか?特に大腸がんとの関連性について、最新の医学的見解をもとに解説します。

「1杯までならOK」とされる科学的根拠

近年、健康に関する様々な情報の中で「お酒は1日1杯まで」という話をよく耳にします。この基準は実際、厚生労働省の飲酒ガイドラインに基づいています。大腸がんのリスクが上がる目安として、男女ともに「週に150g(1日20g)」のアルコール摂取量が設定されています。

具体的に1日20gのアルコール量とは次のような量に相当します:

  • ビール中ジョッキ1杯(500ml)
  • 日本酒1合(180ml)
  • ウイスキーダブル1杯(60ml)
  • 焼酎25度 グラス1/2杯(100ml)
  • ワイン2杯程度(200ml)
  • チューハイ7% 缶1本(350ml)

これらの量を超えると、大腸がんのリスクが高まるとされています。そのため「1杯まで」という目安が設けられているのです。

大腸がんとアルコールの関係性

都立駒込病院消化器内科の小泉浩一氏によると、お酒をよく飲む人は大腸がん、特に直腸がんになりやすいことが様々な研究から明らかになっています。しかし、そのリスク上昇は思ったより控えめで、約1.2倍程度です。

ヨーロッパで実施された大規模研究では、男性は純アルコールに換算して1日当たり24g、女性は12g以上の多量飲酒群と、それ以下しか飲まない少量または無飲酒群を比較したところ、大腸がん全体では1.15倍のリスク上昇が確認されました。部位別では、S状結腸がんが1.09倍、直腸がんが1.23倍というデータが示されています。

このリスク上昇率は、例えば「お酒を飲むと顔が赤くなる人の食道がん」などに比べるとかなり低い数値だと言えます。そのため、小泉医師は「1日当たりビール350mg缶1本、ワイン2杯、日本酒1合程度の少量飲酒であれば、影響はあまりない」と述べています。

適正飲酒のメリットとデメリット

適正飲酒のメリット

適正量の飲酒には、以下のようなメリットがあるとされています:

  1. ストレス解消効果:アルコールは大脳新皮質の働きを鈍くし、普段抑制されている感情を開放させる効果があります。
  2. コミュニケーション促進:お酒を介して会話が弾み、人間関係が円滑になることがあります。
  3. 食欲増進:アルコールには消化酵素の分泌を増やし、食欲を促進する効果があります。
  4. 一部の病気予防効果:少量の飲酒習慣がある人は、全く飲まない人や大量に飲む人に比べて、心臓病や脳梗塞、糖尿病の発症リスクが低いとされています。

飲酒のデメリット

一方で、過剰な飲酒や不適切な飲み方には以下のようなリスクがあります:

  1. 大腸がんを含む様々ながんのリスク上昇:特に大腸がんでは、1日20g以上のアルコール摂取でリスクが上昇します。
  2. 心臓病・脳卒中のリスク:少量飲酒ではリスクが下がる場合もありますが、1日約20g以上の摂取では発症リスクが上がります。
  3. 肝臓病のリスク:飲み過ぎると脂肪肝を引き起こし、長期的には肝硬変や肝がんにつながる可能性があります。
  4. アルコール依存症のリスク:習慣的飲酒により耐性が生まれ、飲酒量が増加し依存状態になることがあります。

より安全な飲み方の工夫

1杯を選ぶなら蒸留酒がおすすめ?

小泉医師によると、「もし本当に1杯だけにとどめるのなら、醸造酒よりも蒸留酒のほうがリスクが低い印象がある」とのことです。これは、蒸留酒は醸造酒に比べて、お酒を造る過程でできる副産物(コンジナー)や添加物が少ないことが影響している可能性があるとのことです。

醸造酒はビール、ワイン、日本酒などで、蒸留酒は本格焼酎やウイスキーなどを指します。リスクを最小限に抑えたい場合は参考にしてみてください。

飲酒時の注意点

空腹での飲酒は避け、肉や魚、卵などたんぱく質や脂質を含む食品と一緒に摂ることが重要です。これによりアルコールの吸収ペースが緩やかになり、胃腸障害などを予防できます。

大腸がん予防のための総合的アプローチ

アルコール摂取を控えめにするだけでなく、大腸がん予防には以下の対策も重要です:

  1. 定期的な検診:大腸がんは初期症状がほとんどなく、進行してから発見されることが多い病気です。40歳以上の方は定期的な大腸カメラ検査を受けることが推奨されています。
  2. 適切な食生活:食物繊維の多い野菜や果物の摂取、赤肉や加工肉の摂取制限なども重要な予防策です。
  3. 適度な運動:運動習慣は大腸がんのリスク低減につながることが知られています。

まとめ:1日1杯の適正飲酒を心がけよう

「お酒は1杯までならOK」という指針は、厚生労働省のガイドラインに基づく科学的根拠があります。大腸がんのリスク上昇は1.2倍程度と比較的小さいものの、健康を守るためには1日当たり純アルコール20g程度(ビール中ジョッキ1杯相当)を目安にするのが望ましいでしょう。

適正飲酒を心がけつつ、定期的な検診や健康的な生活習慣を組み合わせることで、大腸がんのリスクを最小限に抑えることができます。お酒は楽しむものですが、「百薬の長」となるか「万病のもと」となるかは、飲み方次第なのです。

参考情報

PHP研究所 – お酒は「1杯までならOK」の根拠とは? 大腸がんに詳しい医師の解説
https://shuchi.php.co.jp/article/12168

東京医療保健大学 – 1日1杯のお酒は体にいい?!
https://www.thcu.ac.jp/research/column/detail.html?id=242

東長崎駅前内科クリニック – アルコールが大腸癌のリスクとして正式にガイドラインに載りました
https://umeoka-cl.com/higashinagasaki/blog/11267

注意

・この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的・法律的なアドバイス等の専門情報を含みません。何らかの懸念がある場合は、必ず医師、弁護士等の専門家に相談してください。
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